「ダンスに出てみないかって言われたとき、無理って思う気持ちと、出たいって思う気持ちと両方あって、結局は後者が勝ったから承諾したの。……出てみたかったの、体育祭に。もっと言うなら、人の代えがきかない種目に出てみたかった。だからね、気にはなっていたけれど、もし時間があったとしても話を聞きにいったかはわからない」
 心に引っかかるものがあったのに、直視することを避けたのは事実なのだ。
 佐野くんが言いうように、私に「責任」はないかもしれない。でも、私が「要因」であることに変わりはないわけで――。
「……一年に話を聞きに行くっていうのは、あくまでも御園生の優しさだと思う」
 佐野くんは一度視線を逸らしてから再度口を開いた。
 意図して視線を合わせず、
「御園生、俺のわがままひとついい?」
 佐野くんは私の返事を待たずに言葉を続ける。
「今、『申し訳ない』って言葉は聞きたくないんだけど」
 私は苦笑を浮かべて頷く。
「大丈夫。ここから先は愚痴でしかないから」
 佐野くんは本日二回目の「え?」という顔で私を見た。
「決まった直後は嬉しいのと申し訳ないのが半々くらいだったの。でも、練習を始めたら申し訳ないなんて思う余裕はなかったし、代表の名に恥じないよう上手になることだけを考えて練習してきたよ。結果、それなりに踊れるようになったと思ってる。だからね……」
 私は肺の奥まで酸素を吸い込み、
「谷崎さんに納得がいかないって言われたとき、今更? って思った。言うならもっと早くに言ってよ、って。私だってがんばって練習してきたんだよ、って。さっき言わなかったのはいい人ぶってたわけじゃなくて、なんかこぉ……沸々沸き起こる感情に戸惑っていたというか、自分の変化に戸惑っていたというか……。でも、胸にしまっておくには過ぎる感情で……。ごめん、踊る前に吐き出したかっただけなの」