翠は不服そうな表情で少し黙り、口を開けたかと思えば、
「……天気予報の話でもいい?」
 そこでどうして天気予報って候補があがったのかには興味があるけど……。
「別にかまわない」
 話すことがなくても天気予報くらいなら俺にも話せそうだ。
 もし、電話をかけて俺が急に天気予報の話を始めたら、翠は気づくだろうか。俺が翠の声を聞きたかったということに。
「お弁当、一緒に食べたいって言ったら迷惑?」
「……迷惑じゃない。ただ――」
 ……俺、言ってなかったか?
 少し考えて、翠に直接話していなかったことに気づく。
「悪い、何も言ってなかった俺も悪い」
「え?」
「新学期始まったばかりだろ……。うちの学校、昼休みくらいしか人と話す時間ないから、その時間を自分との時間に割かせるのを遠慮しただけ。翠が一緒に食べたいっていうなら一緒に食べる。でも、まだ話したことがない人間がいるならクラスにいたら?」
 翠は新たに目を潤ませた。