午後一番にある色別パレード、応援合戦に備え、このお昼休みの間に全部の組が着替えを済ませなくてはいけない。そのため、先に更衣室を使う組、あとに更衣室を使う組、とあらかじめ決められていた。赤組は前者、先に着替える組。
 周りの友達がチアリーダーの衣装や法被姿に着替える中、私はひとり緊張しながら黒い学ランと対峙していた。
 実は、この長ランに袖を通すのは今日が初めてなのだ。
 ツカサが作ってくれた長ランは特別度が高すぎて、ハンガーにかけて眺めることしかできなかった。
 きちんと採寸して作られたものなのだから、サイズが合わないということはないだろう。そうとわかっていても緊張してしまう。
 ドキドキしながら袖を通し、鏡に映る自分に視線を移す。
 こういうのは身長の高い人が着るから様になるのだと思っていたけれど、鏡に映る自分はなかなか様になっているように思える。
 私に用意された長ランは、明らかに男子が着る長ランとはシルエットが違った。
 脇下からウエストのあたりまでは程よくシェイプされ、腰から裾にかけてAラインになっている。そんな形のおかげか、一五八センチの私だけれど足が長く見えなくもない。
「翠葉、そんな不安そうな顔しなくても似合ってるわよ?」
 桃華さんは長ランの裾を手に取り内側の刺繍を目にすると、
「……これがあの男の仕事かと思うと踏みにじりたくなるけれど」
 穏やかではない感想をくださった。