「……黒組もうちと変わりませんよね?」
「ま、そうだね。司は会長だけど会計と言っても過言じゃないし」
 そんな会話をしていると、スタートを知らせるピストルの音が鳴り響いた。
「おぉっ、さすが佐野くん。はっやいなぁ~……」
 徒競走ほど顕著ではない。しかし、明らかに群を抜いて速い。
 トップで第二走者の飛翔くんにバトンが渡ると、組を問わない黄色い声が挙がった。次位でバトンをつなげたのが黒組ならば、声援に女の子の声しか聞こえなくなるほどだ。
「すんげー人気……」
「本当に……」
 球技大会や陸上競技大会で知ってはいたけれど、知っていたとしても改めて感心するほどの声援が挙がっているのだ。
 飛翔くんとツカサはタッチの差で次の走者へバトンをつないだ。すると、途端に歓声が弱まる。
「女子の皆さん正直すぎでしょー……」
「正直ですね……」
「でもって、次の海斗が走り出したらまた盛り上がるんじゃない?」
「かもしれません……」
 そんな冷めた会話をする隣では、放送委員が競技を盛り上げるべく実況中継を行っていた。