ゴール近くにたどり着いたとき、飛翔くんがトップでゴールインしたところだった。
 さすがは飛翔くん。足も速ければ人気も高い。
 組の応援というよりは、飛翔くんを応援する声しか聞こえてこなかったように思う。
 中には走りきった飛翔くんにタオルを差し出す女の子もいたけれど、飛翔くんは「いらない」の一言で突っぱねる。しかし、そんなことは想定内なのか、女の子たちは飛翔くんのあとをついていく。
 それを見て抱いた感想などひとつしかない。
 気丈だなぁ……。私なら無理だ、色々と……。
 片思いの人に「タオルを使ってください」と差し出すこともできそうになければ、突っぱねられたあと、その人を追いかけて歩くこともできそうにはない。
 さらには、追いかけて歩いてはいるものの、それに飛翔くんが対応しているふうではないのだ。
 飛翔くんを好きになるということがどれほど大変なことなのか、などと変なところに気が向いてしまう。と、その人物が私をめがけてやってくる。もちろん、多数の女の子を引き連れて。
 何かの間違いだと思いたい。
 ゆっくりと自分の背後を振り返ってみたものの、これといった人はおらず、再度飛翔くんに視線を向ければばっちりと目が合ってしまった。
 あの、来ないでください……。
 切実に願うも、飛翔くんの長いコンパスは確実に私との距離を詰めていた。
 たどり着くなり、すでに確認済みの内容をつらつらと話され、なんとなく意味を察する。
 つまり、「仕事してるから邪魔すんな」ということを、周りの女の子に対し行動のみで表しているのだろう。
 結果、私は疎むような目で見られることになるわけで……。