あの日から、図書室へ出向いて進捗状況をチェックすることはしていない。きっとしていてもしていなくても、あの女は滞ることなく仕事を済ませているのだろう。そして、紫苑祭当日には万全を期した状態で得点集計に挑むのだ。
 集計のしやすさに春日先輩は感謝の意を伝えるかもしれない。司先輩は口にせずとも口元を緩ませる程度のことはしそうだ。
 そんな様子までまざまざと想像できるのだから苦笑せざるを得ない。
 そんな場所に自分がいたとして、俺はいったいどんな顔をすればいいのか。
 あの女の性格からして「してやったり」といった態度はとられないだろう。それでも、今までが今までの対応だっただけに俺が困る。
 自分が間違っていたことに気づいたのなら、それを認めて謝罪すればいい。しかし、どうしてかその行動をとれずにいた。

 日々、組ごとでの練習が続く中、久しぶりに生徒会の招集がかかった。しかし、今日集まっている場所は図書棟ではなく第一小体育館。
 どうやら姫と王子に必要となるスチル写真撮りが行われるらしい。
 別にメンバーが全員集まる必要はないだろう、そう思いながら現場へ向かうと、写真部が簡易スタジオをセッティングしているところだった。そこへモデルとなるふたりが到着。
 中等部では紅葉祭で陣頭指揮を執る姿しか見られなかったため、司先輩の長ラン、白手袋という姿は新鮮さを覚える。対して、御園生翠葉はチアの格好で頭をポニーテールにされていた。