こんな状況に陥ってもフォローするほど、あの女にどんな価値があるというのか。
 俺には理解ができない。
 それはさておき、あの女の意思を尊重したうえですべてがうまく回る方法などあるのだろうか。
 考えたところで、司先輩が会計を手伝うという手段しか思いつかないし、そんな様は見たくない。
 自己中なうえに仕事もできない無能女は論外として、今まで尊敬してきた司先輩に失望するような結果は見たくない――。

 貧血騒動があった翌日、いつもと変わらない昼休みが存在した。つまり、ミーティング込みの弁当タイム。その場には御園生翠葉もきちんと出席していた。
 弁当を食べ始める前に御園生翠葉は昨日のことを謝罪し、さらには頭をかばった俺に礼を述べた。
「で、解決策は見つかりそう? それを聞かないことには安心してミーティングできないんだけど」
 団長の切り込みに、御園生翠葉は「はい」と答えた。
「それ、どんな策?」
「……実は、長ランをふたつ作らなくちゃいけない事態に陥っていたのですが、それが一着で大丈夫になりました。なので、このあとご迷惑をおかけすることはないと思います」
「会計の仕事は大丈夫なの?」
「はい。会計と勉強をする時間はきちんと取れていたんですけど、衣装を作る時間は睡眠時間を削るしかなくて……」