「会計、今からでも四人で回せばいいだけじゃない?」
 俺にしては優しい言葉をかけたつもりだった。けれども、
「それだけは嫌っ」
 御園生翠葉は噛み付く勢いで抵抗を見せた。
「嫌とかそういう問題じゃないと思うんだけど」
「それでも嫌なの。……だって、優太先輩が言ってたもの。私が会計の作業をするから副団長の仕事ができるって」
「それ、あの時点ではって話だろ? 今となっては状況が違う。あんただって副団長を任されてる」
「そうなんだけど……組別のスケジュールが出来上がっている今、みんなにお願いなんて――」
 人に迷惑をかけるのは嫌、そういうことなのだろう。でも、このまま進んだとしたら間違いなくどこかでトラブルが生じる。そんなこともこの女はわからないのか。……なら、突きつけてやる。
「そうやって自分追い詰めて、人に迷惑かけてどうしたいの?」
「飛翔、言いすぎ」
「自分、本当のことしか口にしてません」
 御園生翠葉は俯いたまま、
「あのっ、大丈夫なのでっっっ――すみません、今日は帰りますっ」
 やけにゆっくり立ち上がったかと思うと、くるりと身体の向きを変えて早足で立ち去った。
「飛翔~……追い詰めてどうするよ」
「別にどうも……。ただ、突きつけられないとわからないバカなのかと思って」
「きっついなぁ……。おまえ、そんなにきついのになんで女子に人気あんの?」
 そんなこと知るか。
「やっぱ顔か? 顔なのか!?」
 そんなバカっぽい会話をしながら応援団の練習に戻った。