「御園生さん、本当のところを教えて」
「……ちょっと、つらいです」
「うん。それ、ちょっとじゃないでしょ?」
 目に涙を溜める姿を見て、ざまぁみろ、と思う自分がいた。
 やっぱりとくに秀でたものなど何も持っていないのだ。
「よしよし、がんばってたね。でも、このまま進めるのには問題あると思うんだ。だから、どうしたらいいか考えよう? 飛翔っ」
 呼ばれて仕方なくふたりの近くへ行く。
「やっぱ御園生さん、結構いっぱいいっぱいみたい」
「……でしょうね。会計の仕事をひとりでこなしてるうえ、衣装作りもあるわけですから」
「その会計の仕事ってどうしてそんなことになってるのさ」
 理由は知っている。知ってはいるが納得はしていない。
 俺が口を閉ざすと、御園生翠葉が申し訳なさそうに口を開いた。
「あの、それも私がいけないというか……」
「ん?」
「去年の紅葉祭のとき、私が生徒会できちんと機能するための規約が作られたんです」
 先日、そのいきさつなるものを聞いて、「また優遇かよ」と思った。
 なんだってそこまでしてこの女を生徒会に残すのか、と不満に思いこそすれ、納得するには程遠い。
「なるほど……それに加えて、今回は出る競技種目が少ない御園生さんに大半が振られてたわけね」
「紅葉祭や紫苑祭における会計は確かに大変です。でも、手分けしてやれるなら、別にひとりが負う必要はないはずなんですけど……。それらひとりで請け負って、挙句体調崩してるんじゃどこになんの意味があるんだか……」
 体調が理由でそんな規約ができたのだとしても、今はその規約がネックになっているのではないのか。