周りからは賛成を唱える声しか聞こえてこない。
「確かに、うちの組に姫がいるんだからそれを使わない手はないよな。黒組だって藤宮を団長にするだろうし」
「姫の長ラン姿超見てぇ!」
「えー? 俺はチアの衣装のほうがいいなぁ」
「わかってないなぁ……女の子が学ランを着るからいいんじゃんっ!」
 ……無理だな。この空気をあの女が覆せるわけがない。
 なんか面倒なことになりそうだ。会計職を一手に引き受けた女が副団長を兼任する? 普通に考えて無理だろ。
 そんなことを考えていれば、推薦で俺の名前まで挙がっていた。
 立候補者がいるのだから、その三人の誰かにすればいいだろ、と思ったが、団長は律儀に三学年全員での多数決を持ち出し、結果的に俺は副団長に任命されることになった。

 副団長など、面倒なものを引き受けるつもりはなかったが、ふと思う。
 これから組内で会うことが多くなれば、司先輩が惹かれた何かが見えてくるのだろうか、と。
 だが、そんな面は見れども見れども見えてこない。
「御園生さん、あんぐりしてるけど大丈夫?」
 団長に声をかけられた御園生翠葉は、
「こういうの初めてで……」
 喋ることすら慣れていないのか、と思うほどにたどたどしく喋る。