「追加申請で悩むようなものが上がってくるとは思わないけど、少しでも不安を覚えたら訊いてくれてかまわない。あとは、収支報告の入力さえ間違えなければすべてエクセルが数字をはじき出してくれる。そんなに構える必要はないから。以上、各組への入金をもってミーティングを終了する」
 司先輩が、仕事のミス以外で人のフォローをするところを見たのはこれで何度目か……。
 それらはいずれも御園生翠葉へ向けられたもの。
 去年の紅葉祭で司先輩の意中の人間には気づいたが、司先輩が誰かに想いを寄せること自体が想像できなかったし、こんなふうにフォローしているところを見るのはなんだか抵抗があった。
 俺から見た御園生翠葉は、平均より見目がよくて勉強ができるだけ。ほかは病弱であったり男性恐怖症であったり、面倒臭い人間にしか見えない。そんな人間が司先輩にはいったいどんなふうに見えているのか――。
 入学してから何度となく接することはあったが、生徒会に入ってもなお、司先輩が惹かれた要因を見出すことなどできずにいた。