体育館を出ると、数段高くなった藤棚のもとにふたりはいた。
「あの、撮影に時間がかかってごめんなさい」
「実質的には時間内に終わったからいーんじゃない?」
「うん、でも、迷惑はかけたと思うし、飛翔くんが言うことはもっともだと思ったから」
「なら、次からは考えて行動して」
「はい」
 自分が喋っている気がしてくる言葉繰りに苦い笑いを噛み締める。
「それからっ、会計の仕事のことなんだけどっ――」
「最後までやりきれよ」
 飛翔は翠の言葉を遮って口にした。
「あのさ、何か勘違いしてるみたいだから言っておくけど、俺は会計職がやりたくて仕事を分担するよう勧めてたわけじゃない。あんたわかってんの? あんたが運動できないってわかってる時点で、どうしたって紫苑祭当日にかかるウェイトはあんたが一番重いんだよ。それなら、それまでの負担は俺たちが負うべきだと思ってた。なのに、仕事独り占めしてバカなの? あんたバカなの? 絶対バカだろ?」
 俺は柱の影で苦笑を漏らす。
 飛翔は俺よりも不器用な人間だと思う。
 いつだって翠に突っかかりはするが、性根が腐った人間ではないし、そこそこ周りが見えている人間だ。そんな人間が素直になれずにいる姿とは、こんなにも滑稽に見えるものなのか。
 俺も周りにはそんなふうに見られているのかもしれない。
 そんなことを考えていると、
「何笑ってんの」
「ううん、ごめん、嬉しくて」
「泣かれるとか、マジやめてほしーんだけど」
「ごめん、すぐ泣きやむ」