自分が作った長ランを携えてゲストルームを訪ねると、神妙な面持ちの翠に出迎えられた。
「何その顔……」
「別に」
 言いながら、翠の自室へと通される。
 翠はデスクに置いてあったものを手に取ると、
「ううう……やっぱり渡したくないなぁ」
「は?」
「だって、絶対ツカサのほうがきれいな仕上がりなんだもの」
 そう言って振り返った翠の胸元には黒い布が見えていた。
 つまり、長ランのことを言っているのだろう。
「そんなの見てみないとわからない」
 翠は今にも地団太を踏みそうな勢いで、長ランを抱える腕に力を入れる。
「そうだったところで、俺は翠が作ってくれた長ランを着るしかないんだけど……。ほら、さっさと出して」
 催促に催促を重ねると、翠は嫌そうに長ランを差し出した。
 丁寧にたたまれたそれを見ていくも、それほどひどい出来だとは思わない。内布に施された刺繍だってそこそこ見られる。
「そんなひどくないし」
 世辞は言わない。だからといって嘘を言ったつもりもない。俺の率直な意見を言ったつもり。