粗方気が済んで翠の細い身体を抱きしめると、翠は静かに一筋の涙を零した。
「いきなりで悪い……」
 謝ったけど、原因が自分にあるとは思えない。何もかも、全部翠が悪い。
「ツカサ……やっぱり学校では嫌」
 学校じゃなかったらどうなっていたかわからないけど――。
「学校じゃなかったら?」
 翠は目を泳がせ何も答えない。けれど、学校じゃなければどうなのかは知りたくて、再度尋ねた。すると、
「……ものすごく時々――」
 言いかけた翠は一度口を噤み、
「……ううん、ごく稀に……だったら」
 尻すぼみに小さくなる声すら愛おしい。
 どうしたら自分の気持ちがすべて伝わるのか……。
 考えても答えは出ず、親愛をこめて翠にキスを落とす。
 不器用な俺なりの愛情表現。それが翠に伝わりますように――。