「翠葉は、翠葉のことが大っ好きな男子の衣装を作るのよっ!」
「……だから?」
「んもーーーっっっ! 司のことだから、紫苑祭におけるジンクスとか何も知らないんでしょっ!?」
「知らなくて困ることはない」
「今まではねっ!」
 嵐は勝ち誇ったかのような顔をしているが、知ったところで困る気が一切しない。
「好きな人に衣装を作ってもらえたら両思いになる。好きな人の衣装を作ると両思いになる。また、彼氏の衣装を作ると仲が永遠に続く。その逆もしかり、彼女に衣装を作ってもらうと彼女との仲が永遠に続くっ」
 たかがそれだけのことでなぜ勝ち誇った顔ができたのか理解に苦しむ。
「だから?」
「翠葉にほかの男の衣装作らせていいのっ!?」
「ただのジンクスだろ……」
 まったく取り合わない俺を見限り、嵐はターゲットを翠に変えた。
「翠葉はっ!?」
「えっ!?」
「翠葉は司の衣装、作りたくないっ?」
 ……まさか、そんなジンクスに左右されるとか言うんじゃないだろうな。
 若干の不安を覚え翠を見る。と、
「作れるのなら作りたいです。でも……ツカサが団長にならなくても衣装は作れるんじゃ――」
「翠葉、よく気づいてくれたわ。そうよ、トレードさえできれば司の衣装を作ることはできるの。でも、司を団長にしなければ、長ラン姿の司が応援指揮しているところは見られないのよっ! どうっ!? 応援団の先頭で、長ラン白手袋している司、見たくないっ!?」
 翠はポカンとした表情で宙を見ていた。