「次、ここを使うのはうちの組だから少しなら融通できるけど?」
 さすがに私事でそれは申し訳なさすぎる。
「……あのね、人が撮るんじゃなければ笑えるかもしれない」
「は?」
「……人に見られているのが苦手なの。だから、セルフタイマーなら笑えると思う」
「じゃ、それ実践して」
 ツカサに手を差し出されて立ち上がると背に手を添えられ、
「あいつらが望んでるのは全開の笑顔らしいけど、普通に笑みを浮かべられればそれでいいから」
 ツカサらしいささやかなフォローが心にしみた。

 現場に戻ってカメラマンを務める部長に声をかける。
「あの、部長にはとっても申し訳ないのですが、セルフタイマーを使ってもいいですか?」
「えっ? 俺、撮らなくていいの?」
「すみません……。人に撮られているとどうしても構えちゃうので……」
「それなら、この機種スマイルシャッターが使えるからそれを使えばいい」
「ありがとうございます」
 その会話を聞いていた生徒会メンバーは、「それで撮れるなら全然オッケーだよ」と請合ってくれた。
 カメラのセッティングが済んでも周りから人がいなくなることはなく……。
「あの、すみません――体育館から出ていてもらえるとありがたいのですが……」
 おずおずと申し出ると、
「面倒くせー女」
 言いながらも飛翔くんが一番に動いてくれ、それにつられるようにして人という人は体育館を出て行った。