紫苑祭直前に行われたのは姫と王子の出し物にされてしまったスチル写真撮り。カメラマンは写真部の部長さん。
 ツカサは私が作った長ランを着て、白手袋とロングハチマキを装着している。
 ただ機嫌悪そうに俯いているだけなのに、格好よく見えるのだから困ったものだ。
 それに対し、私は小柄なクラスメイトから借りたチアの衣装を着せられ、髪の毛はポニーテールにされていた。
 スカートは去年の紅葉祭で着た衣装よりも短い。
 恥ずかしさのあまりに腰にジャージの上着を巻いて第一小体育館へ向かうと、
「はーい、翠葉はそのジャージ取ってねー」
 嵐子先輩に絡まれさらりとジャージを取り払われてしまう。
「せっ、先輩っ、写真撮る直前まではっっっ」
「翠葉、足細いんだからいいじゃない」
「ただ単にもやしなだけですっ」
「いやみな子ねぇ……。去年と比べると少し体重増えたっぽいし、十分きれいな足よ?」
 そうは言われても恥ずかしくて、私はその場に座り込んでしまった。
「翠葉にきてるオーダーは、ポーズをとって笑顔全開」
 にこりと笑った桃華さんが軽快に読み上げた。
 そんなオーダーを聞いたら笑顔どころか真っ青だ。
 ポーズって何っ!? 笑顔全開なんてできる気がまったくしない。
「翠葉、立って左足軽く上げて片足立ち。ボンボン持った手は腰にあてて。ほら、さっさとやるっ!」
 嵐子先輩と桃華さんに急かされてポーズを作るも、恥ずかしさが勝って背筋をただすことができない。
 見るに見かねたツカサが私の姿勢を直して脇に立ってくれた。その場で背中合わせの写真を一ショット撮られる。