「この栞は使い勝手が良くていくつか持ってるけど、人にプレゼントされたのは初めて。名前やメッセージが入ってるのはこれだけ」
 特別であることを伝えるために言葉を繰り出したところでこれがせいぜい。
「……本当?」
「本当……。もし翠が俺と同じ立場だったらどう思う?」
「……嬉しい」
「……だから、ありがと」
 結果的には自分の感情を翠に言わせている始末。この性格はどうにかならないものか。
 翠にじっと見られていることに耐えかねて顔を逸らす。と、
「お茶、淹れてくるっ」
 翠はバタバタと部屋から出ていった。
「……顔、熱い。勘弁してくれ……」
 たったの二言だ。嬉しい、ありがとう――なんてことのない言葉。なのに、どうしてこんなにも遠まわしな言い方しかできないのか。
 そうは思うのに、そんな自分を翠が受け入れてくれていると思えばいつまで経っても直らない。