相変わらず、ツカサに教えてもらうと予習復習も早くに終わる。
 今日はいつもより早くに勉強を終えたから、最後にお茶をご馳走することにした。
 トレイを持って自室へ戻ると、
「ダンスの練習、どうだった?」
「あのね、先日初めて佐野くんと踊ったの。今までツカサと踊っていたから身長差とか最初は慣れなかったのだけど、身長が近い分、少し踊りやすかったかも?」
「ふーん……さすがに身長に文句を言われても変えようがないんだけど」
「えっ!? そんなつもりで言ったわけじゃないよっ?」
 ツカサはクスリと笑ってお茶を飲んだ。
「もぅ……意地悪」
 こんなふうにからかわれるのは日常茶飯事。
 いつも自分が焦ってばかりで悔しいわけだけれど、一度として仕返しをできたためしがないのがもっと悔しい。
 少し気を取り直してお茶を飲み、
「桃華さんや海斗くん、静音先輩にもとても褒めてもらえたの。ツカサに教えてもらって良かった。ありがとう」
「……ま、見られる程度には仕上げたつもりだけど、厳しく指導しようと何しようと、それを習得したのは翠だから、俺だけの力じゃない」
 澄ました顔でカップを口へ運んだツカサは、一気にくい、とお茶を飲み干した。
 音を立てずにカップをテーブルへ置くと、
「帰る。翠も早く休める日は早く休むように」
「うん。いつも遅くまでありがとう」
 立ち上がったツカサはそのまま部屋を出て行ってしまいそうな感じがした。
 テスト期間が終わってからはツカサにキスをされていない。それは毎日会っているのがゲストルームだから。
 でも、このままいったら紫苑祭が終わるまで――否、紫苑祭が終わっても十階にあるツカサの家へ行かない限りはキスをしてはもらえないのだろう。