静音先輩はダンス部の部長というだけあり、非の打ち所がないダンスを見せる。その相手をする風間先輩は、共に踊る静音先輩から指摘があれこれ入っていた。
「静音、厳しすぎ~」
 踊り終わった風間先輩が床に転がる。
「何よこのくらい。今言った場所、次までには直してきてよね」
 言ったあと、静音先輩はくるりと振り返り私に視点を定めた。
「私、姫の踊りはまだ見ていないのよね。藤宮くんに教わってるって聞いていたけれど、仕上がりはどんな具合?」
「困らない程度にはステップを踏めるようになりました」
 すると、
「静音先輩、嘘です。今の嘘ですから。たぶん、私と翠葉なら翠葉のほうがダンスは上です」
「あら、桃華さんよりも上手なの……? それは見てみたいわ」
 静音先輩のその一言に、私たち四人は改めて最後の一曲を踊ることになった。 
 踊っている間、静音先輩に注視されているのがひしひしと伝わってきて緊張もしたけれど、今日踊った中では一番の出来上がりという程度には踊れた。
 最後、息を整えるために教室内をてくてく歩いていると、
「驚いたわ。姫においては指摘する点がひとつも見当たらない。加点されこそすれ、減点なんてあり得ないわ。それに、佐野くんもずいぶんと上手になったように見えるけれど、それはきっとパートナーが変わったからね。桃華さんと海斗くんも前回よりは格段に良くなってる。これはもしかしたらもしかするかも」
「静音がそう言うんだから間違いないよ。でも、なんか悔しいよなぁ。御園生さんを仕込んだのが藤宮っていうのがさ」
 さっきから何度となく言われていることだけれど、ここまで褒められると少し気恥ずかしくもあり、私はツカサに感謝しつつ小さく俯いた。