海斗くんたちのダンスが終わったあと、
「あのね、私もまったくできている気がしないから人様のダンスを指摘するのはあれなのだけど……」
「何? 言っちゃってよ。直して加点されるほうがいいじゃん?」
「そうよ」
 腕組をしたふたりににじり寄られ、
「……笑顔」
「「え?」」
「笑顔じゃなかった。怖い顔をしていたわけじゃないけれど、ダンスの評価には表情もあるのでしょう? 私も散々ツカサに言われたの」
 海斗くんと桃華さん、そして佐野くんも苦笑い。
「デスネデスネ……司のやつ、そこまで翠葉を仕込んできたか……」
「笑顔かあああ、確かに御園生は微笑む程度に笑ってたよな。俺もそこできてないや」
「悔しいけど、翠葉の言うとおりだし、あの男の言うとおりだわ。それに、何? 翠葉、ものすごくきれいにダンスまとめてきてるんだけどっ」
「だよなっ!? 俺、今日初めて御園生と踊ったけど、すごく踊りやすかった!」
 これは責められているのかなんなのか……。でも、佐野くんに踊りやすいと言ってもらえたのはプラス評価としていいだろう。
「じゃ、次。佐野たち踊ってみ? 俺がこれでもかってくらいにダメだししてやっから」
 海斗くんに言われて曲が流れ始めた。
 最初にするお辞儀は丁寧かつ優雅に。パートナーに預ける手はふわっと軽く乗せる。あくまでも自分の腕は自分の筋力で支え、相手に重みをかけない。胸は程よく開いてホールド。ステップは流れるように足を滑らせ、背中はしなやかに反らせる。