ツカサとの練習でも一曲を通して踊れるように練習していたけれど、最初の頃は息が上がってしまって一曲通して踊ることができず、ツカサの判断で何度も中断していた。それでも、最近は一曲を通して踊れるようになってきていた。
「御園生、息が切れ始めてるけど大丈夫?」
「うん。あと少しだから平気」
 ダンスが終われば私は休まずに教室中を歩き始める。
 私以外の三人はきょとんとした顔で私の行動を目で追う。
「あのね、クールダウン。これをしないと貧血起こしちゃうの。でも、五分も歩けば大丈夫だから気にしないでね」
「じゃ、先に俺らが踊るから見て指摘して?」
 海斗くんに言われてコクリと頷いた。
 桃華さんと海斗くんという組み合わせは見ていてとても目の保養になる。見目が麗しいだけでなく、ふたりとも身長が高いこともあり、踊りがダイナミックに見えるのだ。そのうえ、ふたりはうちのクラスで一番ダンスの成績がいい。
「桃華さん、もう少し上半身をしなやかに」
「はい」
 桃華さんはすぐにオーダーに応える。
 ダンス種目はきちんとステップが踏めているかが最低ラインで、プラス加点が欲しい場合はどれだけ優雅に踊れているかが争点になるという。それから、表現、という意味では表情も加点対象になるらしく、ツカサとの練習ではひたすら笑顔を強要されてきた。
 今も桃華さんと海斗くんの表情をチェックすれば指摘しなくてはいけないわけだけど、自分だってそれができているかは甚だ怪しい限りなわけで、なかなか指摘するには至らない。でも、せっかくの練習なのだ。やっぱり言ったほうがいいのだろう。