ぎこちなく踊っていると、
「御園生さん、一度休んで私と真白さんのダンスを見ていてください。見る場所は真白さんの上半身。腕や肘の位置と目線です」
 真白さんと涼先生が踊りだすと、今まで私が踊っていたものと同じものなのか、と思うほど優雅なダンスだった。
 腕と肘は肩と同じ高さくらいにキープされており、真白さんの視線は進行方向を見ている。背筋もしなやかに反っていてとてもきれいだ。
 うっかり見惚れていると、
「御園生さん、次は御園生さんが踊るんですよ」
 涼先生に言われてはっとした。
「翠葉ちゃんはもう少しリラックスして踊るくらいがいいかもしれないわね。相手が司だったら緊張しない?」
 いえっ、もっと緊張するのでどうかっっっ――と言うまでもなく、夕飯を終えたツカサが相手をするべく目の前に立っていた。
 好きな人とダンスを踊れるのはとても嬉しいことだと思う。でも、こんなに明るい場所で、人に見られているかと思うと恥ずかしくて仕方がない。そのうえ、私はまだステップを覚えたてなのだ。時々足がもつれそうになることもあれば、相手の足を踏んでしまうこともある。
 ツカサに腕をホールドされてすぐ、ツカサの指先が肩甲骨に触れて、意識がそこに釘付けになった。
 涼先生のときはこんなに意識しなかったのに――。
 そんなことを考えていると、
「翠、顎引いて視線上げて。腰が引けてるのもどうにかして。背筋はきれいに伸ばすこと。できることなら百合の花びらみたいに少し反るくらいがベスト」
 ひとつひとつ直されて、ようやくポジションをキープできる私はなんとも居たたまれない。
 何よりも、恥ずかしがる前に基本的なことをできるようになれ、という話だった――。