私はその手を見たまま、
「御園生翠葉です、よろしくお願いします」
「握手はなし?」
 挨拶に握手は普通……。
 そうは思っても、その手を取ることはできなかった。
「真咲、あんま無理強いすんなよ」
 後ろから現れたのは海斗くん。
「いや、まだ無理強いってレベルじゃないっしょ」
「翠葉が固まってる時点でアウト!」
 海斗くんの大きな手が頭に置かれ、髪の毛をくしゃくしゃとされる。
「翠葉、慣れだよ慣れ。一年のときだって最後にはみんなと握手できただろ?」
 コクリと頷くと、
「少しずつ慣れていけばいい」
 海斗くんにそう言われて少し安心した。