日曜日――私は前日ツカサに言われたとおり、お昼ご飯を食べずに真白さんを尋ねた。
 林を抜けて門柱が見えてくるとドアが開き、真白さんとハナちゃんが出迎えてくれる。
「翠葉ちゃん、いらっしゃい。七夕ぶりね」
「はい、お久しぶりです」
「さ、入って? お昼ごはんにパスタを作ったの。あとはソースとパスタを絡めるだけだから」
 リビングに通されたものの、涼先生の姿はない。
「あの、涼先生は……?」
 キッチンカウンターから真白さんに声をかけると、
「今日もお仕事で病院へ行っているの。夕方四時ごろには帰ってくるって仰っていたから、それまでは刺繍をして過ごしましょう」
 仕事のあとにダンスの練習なんて申し訳ない気がしてしまう。
「……あの、ご迷惑じゃなかったでしょうか?」
「迷惑……?」
 真白さんはきょとんとした顔で首を傾げた。
「突然刺繍とワルツの練習だなんて……」
 語尾を濁すと、真白さんがクスクスと笑った。
「迷惑じゃないわ。誰かと一緒に刺繍をするのは久しぶりだから楽しみ。それに、涼さんも翠葉ちゃんが来るの楽しみにしているのよ」
「え……?」
「だって、司ったらちっとも翠葉ちゃんを連れてこないんだもの。自分ばかりマンションに行っていてずるいわ」
 ずるいの根拠がよくわからなかったけれど、会いたいと思ってもらえていることはなんとなくわかって、それが嬉しかった。