「あのねっ、ツカサは知らなかったの。私、副団長になったことを話していなくて……。昨日、うちに来てくれたときに会計を手放せって言われたのだけど、それは嫌だって突っぱねてしまって……」
「翠葉ちゃん、責任感と無理は混同しちゃだめだよ? 会計の仕事がしたいなら、衣装の製作は私手伝うし。負担は分担しようよ」
 美乃里さんの言葉に苦笑を返す。
 優しい言葉や気遣いに心があたたかくなるけれど、これがツカサと話す前なら苦しくて苦しくて仕方がなかっただろう。
 今、穏やかな気持ちで聞いていられるのは、ツカサと話したあとだから。
 改めてツカサに感謝しつつ、クラスメイトを見回した。
 さすがにこの状況でツカサと話した内容を話せる神経は持ち合わせていない。だから、間接的な言い回しになってしまうけれど――。
「心配かけてごめんね。でも、抜け道を作ってくれた人がいるから大丈夫。最後までがんばる」
 ツカサの名前は出さなかった。でも、海斗くんたちにはばれてしまったようだ。
「司、今度はどんな手使ったんだよ。会計の仕事一緒にやるとか?」
「あー……えと、会計の仕事は死守しました」
「なんで……」
「だって、去年せっかく作ってもらった経路だもの。そんな易々と手放せない」
「でも、それ以外に抜け道って何がある?」
 私は恥ずかしく思いつつもツカサの申し出を答えることにした。