湯船に浸かるのもそこそこに出てきて自室で髪の毛を乾かしていたら、本日二度目の貧血に見舞われた。
 意識を失うほどではないにしても、しばらく身体を横にしたまま動けそうにはない。
 がんばりがきくのもあとわずかなのだろうか――。
 そんなことをぐるぐる考えていると、部屋をノックする音がして、すぐにドアが開いた。
「やっぱ貧血起こしてるっぽい」
 その声は唯兄のもの。そして、物言いを考えればほかに誰かがいる気がした。
「翠葉、大丈夫?」
 お母さんだ。
「ん……ちょっと貧血」
「でも、今日二回目でしょう? 無理してるんじゃないの?」
「うーん……」
 無理しているのはわかっているけれど、無理と認めるのが非常に悔しい。
 悔しがっていても現状が変わるわけではないし、私の体力が増えるわけでもない。
 何か打開策を見つけなくちゃ……。
 さっきから同じことばかりが脳内をめぐる。
「リィ、今抱えてるもの言ってみ?」
「……会計の仕事。長ランふたつとハチマキふたつの製作。副団長任務。授業の予習復習……」
「あのさ、それ、健常な人間であっても結構ハードなノルマだと思うよ?」
「うーん……」
 血が引く感覚が薄れ、ゆっくりと起き上がる。