「あの、もしかして……私に説得ができるとか思ってます?」
 恐る恐る尋ねると、嵐子先輩は顔の前で手を合わせた。
「お願いっ、助けてっ!」
 助けて、と言われても……。
「あの、全然お役に立てる気がしないのですが……」
「ここにいてくれるだけでもいいから!」
「はぁ……それだけでいいなら」
 私は嵐子先輩に手を引かれ、ツカサの座る席まで連れて行かれた。
「ツカサ、翠葉が誰の衣装作るか知ってる?」
 ツカサは煙たそうに嵐子先輩の顔を見る。
「翠葉が誰の衣装作るか知ってるか、って訊いてんのっ!」
 ツカサは無言で知らない旨を示す。と、
「翠葉は、翠葉のことが大っ好きな男子の衣装を作るのよっ!」
 ……それは初耳です。なんだか香乃子ちゃんにしてやられた気分だ。
 そんなことを思う傍ら、
「……だから?」
 ツカサは実に関心なく答えた。
 机に肘をつき剣呑な視線を向ける様は、ここ一番の柄の悪さではないだろうか。