私は香乃子ちゃんの組、黒組の男子の衣装を作ることになっていた。そこでふと、ツカサの衣装は誰が作るのだろう、と思いはしたものの、深く考えることはやめた。
 ツカサの衣装だなんてどれだけ競争率が高いのか――考えただけでも恐ろしい。そもそも学年が違うのだ。私がツカサの衣装を作れる機会はないと思うべき。

香乃子ちゃんから生地とパターンを渡された日、嵐子先輩に呼び出されて三年A組に赴いた。
「翠葉、こっちこっち!」
 手を引かれて教室に入ると、たくさんの人がいた。その人たちの視線が私に向いていて居心地が悪い。私はいったいなぜ呼び出されたのか……。
「うちの組、まだ団長が決まってないの」
「えっ……? でも、もうほとんどの組が決まっているし、書類の提出も済んでいるんじゃ――」
「っていうか、ほぼほぼ決まっているんだけど、了承しないのよ……」
 そこまで言われて、なんとなく察する。
「もしかして、ツカサが推薦されていてそれを本人が了承しないとか、その手の話ですか……?」
「当たり」
 状況はわかった。けれども、なぜほかの組である私が呼ばれたのか――。