――。
 名乗ることは改めようとしているくせに、こっちは改める気がないのだろう。
 出られる状況でなければ出ないし、出ても話せないなら折り返す旨を伝える。
 何度もそう話してきたが、「でも、これだけは気になるから」と言われた。
 いつもの問いかけに「問題ない」と答えると、「あのね」と言葉を区切る。
 次の声を待っていると、急にカウントダウンが始まった。
『十、九、八、七、六、五、四、三、二、一、誕生日おめでとうっ! ツカサ、十八歳の誕生日おめでとうっ!』
 十から始まるカウントに予想ができなかったわけじゃない。ただ、誕生日におめでとうと言われることはこんなにも嬉しいことだっただろうか、と考えさせられただけ。
『ツカサ?』
「……いや、少しびっくりしただけ」
 主に、自分の感情の変化に……。
『去年、ツカサがこうやってお祝いしてくれたでしょう? だからね、絶対にカウントダウンしたかったの』
 翠の弾んだ声が耳に心地よかった。