公共の乗り物に乗るなら、藤倉から支倉まで行き、支倉から乗り換えて三駅目。そこからバスに乗ることになる。が、車の免許を取ったのだから車でだって行けるわけで……。
 公共の乗り物を検索しているところを見ると、やはり自分の運転に不安があるのだろうか。
「じゃぁ、次はそこへ行こうね。次はなんのご褒美かな……」
 宙を見る翠に待ったをかける。
「それ――デートに対する翠の認識が知りたいんだけど」
「え……?」
 え、じゃない。え、じゃ……。今の言い方だと、何かご褒美がないとデートができないみたいに聞こえる。
 翠は少し考えてから、
「特別な日。ご褒美、プレゼント、お祝い?」
 最後に疑問符をつけて返事した。
 俺はため息をつき、
「それ、改めて」
「え……?」
「特別な日はいいにしても、ご褒美とプレゼント、お祝いって何? 前にも言ったけど、プレゼントとデートを相殺しなくていいし、特別な何かがなくてもデートくらいするんだけど」
「……本当?」
 きょとんとした顔が俺を見る。
「嘘つくようなことじゃないだろ」
「なんだか嬉しい……」
 そう言って笑った翠が、異様にかわいく見えて恥ずかしくなった。
 恥ずかしさに耐え切れず、俺は視線を逸らすことでその場をやり過ごした。