海に着いたのは四時前。
 サイドブレーキを引いたら翠が起きた。もしかしたら眠れはしなかったのかもしれない。それでも翠は車を降りると、「うーん」と大きく伸びをして見せる。
 太陽の日差しを受けた翠の肌が、より白くきれいに見えた。
「さすがにまだ暑いね? でも、風が気持ちいい」
 翠は風に髪をなびかせ歩きだす。
 駐車場の前の砂浜に出てみたものの、砂は熱を持っていてその上を歩けそうにはなかった。
「翠、先に海浜公園へ行こう」
「うん!」
 駐車場伝いに海辺を歩き、海浜公園へ入る。けれど、夕方ということもあり、道を引き返してくる家族連れが多かった。中には日陰を選んで犬の散歩をしている人もいる。
 昨日来たときにも園内は見て回ったけれど、植物の説明までは目を通しておらず、それらを見つけるたびに足を止める翠に付き合って読みながら歩みを進めていた。
 小高い丘にある東屋に着くと翠は風景を見渡し、
「暑いけど、気持ちのいい景色だね」
 昨日も見た風景を回し見ては自分も頷く。
 家族と来るのと翠と来るのは何かが違う。明確な「何か」はわからないものの、翠が隣にいることを嬉しいと思う。
 そんなことを考えていると、
「ツカサは何が好き? どういうところへ出かけたら楽しい?」
 突然の質問に意表をつかれた。