雅さんと話さなければ、完全にこの言葉に呑まれてしまっていただろう。でも今は――。
「前例はあります。だからこそ不安に思う部分があったのだけれど……決めたんです。今は自分の気持ちを信じよう、って。だから、ツカサ以外の人を好きになる予定はありません」
 秋斗さんは雅さんに向き直り、
「雅、翠葉ちゃんに何か吹き込んだ?」
「吹き込んだなんて人聞きの悪い……。私はただ、翠葉さんとお話をしただけです」
「でもさ、雅との会話って、時としてカウンセリングになってたりするじゃん?」
「それはどうでしょう?」
 雅さんは明確な言葉は口にせず、にこりと微笑む。
 そんな雅さんと視線が合い、私も自然と笑顔になった。
「雅さん、今日はとても楽しかったです。お土産もたくさんありがとうございました。お誕生日、楽しみにしていてくださいね」
「こちらこそ、とても楽しい時間でした。誕生日、楽しみにしているわね」
 そんなやり取りをしていると、ロータリーに車が停車する。
 私たちはエントランスを出て車を見送った。
 なんとなしに空を仰ぐ。と、たくさんの星が瞬いていた。
「星がきれいですね」
「そうだね。明日もいい天気になりそうだ」
 隣に秋斗さんが立っていても気まずさはない。