「翠葉さんは学校で告白されることはないの?」
「去年は何度かありました。でも、今年に入ってからはありません」
 雅さんは少し考えてから、
「それもそうね……司さんとお付き合いしているとわかっていて告白してくる人はそうそういないわね」
「そういうものなんですか?」
「こと、藤宮の学園内においてはその線が濃厚よ。……じゃ、例えばの話。もし、学内で仲のいい友達に告白されたとして、一度断ったにもかかわらず、何度も告白してくる人がいたら翠葉さんはどう対応する?」
 どう対応するも何も、その都度断ることしかできない。
 そこまで考えてはっとした。
 思い出したのだ。空港まで秋斗さんに会いに行く前に佐野くんが教えてくれたことや、鎌田くんに告白されたあと、自分がツカサに話したことを。
 私は何度でも断ると口にしていたし、それは相手が自分を諦めてくれるとかそういうこととはまったくの無関係だと断言していた。少なくとも、今ほど悩んではいなかったし、ツカサに対しても確固たるものを提示できていた。
「……どうして忘れていたんだろう。……私、途中から何もかも混同して考えていたみたいで……」
「そうみたいね。でも、そういう翠葉さんの気持ちを察して、秋斗さんが付け入っていた気がしなくもないけれど……」
「付け入る、ですか?」