「秋斗さんのことは考えなくても大丈夫。きっと、何度『ごめんなさい』と繰り返し言われたところで、あの人が痛手を負うことはないと思うわ」
「……そうでしょうか」
「そこまで秋斗さんを気にかけるのはどうして?」
 それは、秋斗さんがどうでもいい人ではないからだ。ツカサとは違う意味で大切な人だから。そして、自分が好きな人に拒絶されることを考えたらひどくつらかったから。少し想像するだけでも恐ろしかった。
「翠葉さん?」
「……秋斗さんがツカサとは違う意味で大切な人だからです」
「……それだけ?」
「いえ……。想像したんです。自分がツカサに拒絶されることを」
「そういうこと……。でも、それは翠葉さんが、という話ではなくて?」
「え……?」
「秋斗さんは、翠葉さんと同じではないのよ? それに、恋愛感情の好意を拒絶することは、秋斗さんすべてを拒絶することとは違うでしょう? それはわかっているかしら?」
 雅さんの真っ直ぐな目に見られ、私はパチパチ、と瞬きをした。そして、すぐに言われた言葉を頭の中で反芻する。
 ――秋斗さんすべてを拒絶することとは違う……?
 言われてみればそうだ。
 私が応えられないものは恋愛感情としての好意であり、秋斗さん自身ではない。
 あ、れ……? どうしてだろう……目から鱗な気分。
 雅さんはにこりと笑ってお茶を勧めてくれた。