「翠葉さんにお土産をと思って選んでいたら止まらなくなってしまって……」
 雅さんは恥ずかしそうに口元を押さえて笑った。
 そんな雅さんと挨拶をする傍ら、秋斗さんは「じゃ、俺はゲストルームにいるから」とその場で別れる。
 雅さんは秋斗さんの後姿を見ながら首を傾げ、私に向き直った。
「翠葉さん、秋斗さんと何かあった?」
「えっ……どうしてですか?」
「だって、翠葉さんを前にしてあの態度――笑みのひとつだけなんて、あっさりとしすぎているでしょう?」
 言われて思った。雅さんは観察眼が優れている、と。
 案内された談話室に着くと、真下さんは飲み物の用意をして部屋を出て行った。
 雅さんはソファに腰を下ろし、真下さんに手渡されたメニュー表をテーブルに開く。
「何かあったの?」
 私はなんとも言えない気分になっていた。
 やっぱり、人が見て違和感を覚える程度にはいつもとは違う対応をしてもらっているし、させてしまっているのだ。
「時間はあるわ。まずは夕飯をオーダーしちゃいましょう?」
「はい」
 私たちはそれぞれ夕飯になりうるメニューを選び、コンシェルジュへ連絡してから飲み物に手をつけた。