マンションに帰ると、私は洋服に着替えてピアノの練習を始めた。
 時刻は六時前。雅さんがマンションに到着するのは六時半頃と聞いている。さらには、到着したらコンシェルジュから連絡が入り、私はその時点で談話室へ移動すればいいらしい。雅さんはコンシェルジュが案内してくれるという。
 六時からご飯の我が家には、着々と人が集まりだしている。でも、唯兄が家にいるのに秋斗さんの姿は見えなかった。
「唯兄、今日は秋斗さん一緒じゃないの?」
「うんにゃ、雅さん迎えに行ってる」
「……そうなのね」
「リィは雅さんと談話室で夕飯食べるんでしょ?」
「うん」
「じゃ、かぐわしい香りだけ堪能しててくださいな」
 言われて、私は食事のBGMになりそうな曲を弾いて過ごしていた。
 六時半前になるとゲストルームの固定電話が鳴り、雅さんの到着を知らされる。
 あらかじめ聞いていた談話室へ向かう途中、コンシェルジュの真下さんに案内されている雅さんと、ともに歩く秋斗さんと出くわした。
 真下さんはカートにたくさんの荷物を積んでいる。紙袋に入っているものも箱に入っているものも、どれにもリボンがかかっているところを見るとプレゼントのようだけれど……。