突然棒読みになった海斗くんの視線の先にはきれいに冷笑を浮かべたツカサが立っていた。
「無駄口を叩く余裕があるのなら、その答案用紙には正しい回答しか並んでいないんだろうな」
「やっ、そのだなっ」
 海斗くんが「勘弁してください」と答案用紙を死守するもむなしく、ツカサにそれを奪われる。
 ツカサは無常にも答案用紙と回答を見合わせ、
「二問不正解。今日は数学以外やらなくていいから」
「んな殺生なぁ~」
「翠は?」
「今答え合わせしているところ。今のところミスはなし。たぶん全問正解」
「がんばってるな」
「うん。今度こそ海斗くんに勝つ心づもりだものっ!」
 そんなこんなの勉強を十時半まですればゲストルームでの勉強はお開き。
 ツカサは海斗くんを先に玄関から出すと、ふたりきりになった玄関でキスをしてきた。
「つ、ツカサ……向こうに人いるっ」
「ここにはいない」
「でもっ――」
 キスをしたあと、
「見られるようなドジは踏まない」
 そう言って玄関を出ていった。
 少し強引なツカサにもドキドキするし、廊下の先――扉一枚隔てたところに家族がいる状態でキスをされることにもドキドキした。
「悔しいなぁ……。今、脈を計ったら間違いなく私のほうが脈拍数多い気がする……」
 あまりにも悔しくて恥ずかしくて、私は自室に戻ってラヴィをぎゅっと抱きしめた。