ツカサは「冷たくあしらえないのならそれでいい」と言ってくれたけれど、本当のところはどうだったのかな……。完全に拒むことを望んでいたのだろうか。
 いっそのこと、口にしてそう望まれたほうが良かったかもしれない。
 気持ち的にいっぱいいっぱいで言葉に詰まっていたら、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
 笑っているのはほかの誰でもない秋斗さん。
「だからさ、言ったでしょう? 覚悟して、って。振られても諦めるつもりはないよ、って」
 確かに言われた。そして、間違いなくその状況だ。
 人に好きになられる、ということはこんなにも大変なことなのだろうか。
「そうだな……とりあえず、ふたりきりになる状況は俺が避ければいいことだし、俺が触れることで翠葉ちゃんが怒られるのもかわいそうだし、逆上した司に翠葉ちゃんがキス攻めにされるのは俺が面白くないから、しばらくは俺から距離をキープするよ。ご心配なく」
 まるで先日キス攻めにされたのを見ていたかのような言葉に私は背筋をブルブルと震わせた。
「あれ? 図星?」
「…………」
「でも、キスで済んでるのならまだいいのかな?」
 秋斗さんはよくわからないことを口にして、「じゃ、勉強がんばってね」とゲストルームをあとにした。
 その場の私には、「完敗」の二文字が残された――。