なんとなく、私が何度「ごめんなさい」と断ろうが、秋斗さんは変わらない気がするのだ。それでも、「好き」と言われるたびに、何度も何度も「ごめんなさい」を伝えるべきなのだろうか。
 そうだ――佐野くんはそう何度も飛鳥ちゃんに「好き」とは言っていなかった気がする。……でも、態度を見れば歴然としていて――。
 飛鳥ちゃん、とんでもない助言をしてごめんなさい……。
 あれこれ考えていると、
「翠葉ちゃんが『迷惑』だって言うなら身を引く。そう言ったら、君はどうする?」
「っ……」
 究極の選択を突きつけられた気分だ。
「迷惑」なんて言葉は使いたくない。でも、その言葉を使えば諦めてもらえるのかもしれなくて……。
 テーブルに置いたマグカップに視線を固定して考えをめぐらせるも、口から出てくるのはわずかな二酸化炭素の集合体のみ。
「あの……ツカサが嫌がることはしたくありません。ツカサが悲しむこともしたくありません。でも、秋斗さんに『迷惑』という言葉を使いたくもありません」
 ものすごく負けた気分だ。
 いいとこ取りしかしたくない、と言っている自分が一番現実味がない。
 やはり、もう一度「ごめんなさい」と伝えるべきなのだろうか。「ごめんなさい」のあとに、「迷惑です」と付け加えなくてはいけないのだろうか。