「あの……どうしてでしょう」
「何が?」
「どうして、そんなに――」
 最後まで言えずに視線を落とし言葉を濁すと、
「翠葉ちゃんにこだわるのか? 好きなのか?」
 秋斗さんは躊躇せずにその言葉を口にする。
「どうしてだろうね? たぶん初恋だからこだわるんだろうし、司を好きだって言われても諦められないんだよね」
「あの、どうしたら諦めてもらえるんでしょう?」
「さぁ、それは俺にもわからないなぁ……。何せ、人を好きになったのは初めてだからね」
 秋斗さんはいつだってこんな調子で、ごく自然に「好き」であることを伝えてくれる。
 そのたびに困惑するのは、私がツカサを好きだとわかったうえで好意を寄せてくれているから。
 鎌田くんとは友達のままでこれからも仲良くしてね、という話になったのに対し、秋斗さんとはそういう話の流れにはならない。いつだってにこにこと笑って、時には真剣な目で「好きだよ」と言われてしまう。
 考えてみれば、飛鳥ちゃんも佐野くんに同じようなことを言われ、同じような境遇にいた。そのときは――。
 そのときに飛鳥ちゃんに助言した自分の言葉を思い出して泣きたくなる。
 そのままでいいんじゃないかな、なんて言ったけれど、そのままってなんて厄介な状況なのだろう……。
「他人事」とはよく言ったものだ。