光のもとでⅡ

「暑い……。さすがにエアコンが入ってない部屋は暑いんだけど」
 翠は戸惑いなく腕をほどき、俺から離れた。
 あまりにも簡単に離れられたことが少し面白くない。だから、
「離れなくていいけど、エアコンだけ入れさせて」
 夏なのにひんやりとした翠の手は気持ちがいい。その手に触れていたくて手はつないだままいると、翠が腕に絡みつく。
 暑いというのも本音だけど、本当は嬉しい。でも、嬉しいとは表に出せないから、
「まだ涼しくないんだけど」
 いつもの翠ならここで離れるだろう。俺はそれを名残惜しく思いながら見ることになる。
 そう思っていたけれど、翠は離れなかった。
「……我慢して。二週間も会えなかったんだもの。少しくらいは我慢して」
 少しむっとしたときの言い方。それが妙にかわいくて、俺はフリーズしてしまった。
 かわいい生き物をまじまじと見ていると、その頭は右に傾き、
「……でも、お茶くらいは用意しようかな。ツカサはコーヒー?」
「いや、ハーブティーでいい」
「じゃ、用意する。キッチン借りるね」
 翠は腕に絡めていた手をするりと解き、キッチンへと向かって歩き出した。
 腕の中に飛び込んできたかと思えばするりと出ていく。俺がそれをどんなふうに思っているのかなんて知りもせず。
 いつか同じことをしてやりたいと思うものの、
「……無理なんだろうな」
 いつだって俺が追いかける者であり、想う者に違いない。