「……せめてツカサに知られる前には克服したいなぁ」
 そんな言葉を漏らすと、みんなにクスクスと笑われた。
「私、翠葉は浮き輪を持ってくると思ってたんですけど、違ったんですね?」
 桃華さんの視線は蒼兄へと向く。
「あ、そっか……浮き輪だったら沖まで連れて行けるし、ただ浮かんでるだけだから心臓の負担にもならないか……」
 唯兄も私も、「そっか」と顔を見合わせる。しかし、すでに時遅し。もう海へ着いているのだから。
「確か、道路沿いにコンビニがあったな……。桃華、浮き輪を買いがてら、少し散歩に行かない?」
 蒼兄が誘うと桃華さんは嬉しそうに微笑み、「はい」と即座に立ち上がった。
 ふたりが浜辺を歩き始めて、残った四人が顔を見合わせる。
「彼氏彼女ですの~……飛鳥ちゃんは佐野っちに彼氏取られたまんまでいいの?」
 唯兄が口にすると、飛鳥ちゃんはほんのりと頬を染め、
「奪還しに行くので唯さん付き合ってくださいっ」
 飛鳥ちゃんは唯兄の腕を引っ張り、唯兄をずるずると引きずりながら海へ向かって歩き出した。