佐野くんは答えを持っているようだ。なのに、教えてもらえないのはどうしてだろう。
 佐野くんの顔をじっと見ていると、
「たとえばキス、とかさ」
 き、キス――っ!?
 ただでさえ暑いのに、さらに顔が熱を持つ。
「御園生からキスするくらいのことをすれば、不安は簡単に拭えるんじゃないかな?」
「無理っっっ」
「無理ってお嬢さん……まさかキスもまだとか言うっ!?」
「……言わない、言わないけどっ――でも、自分からするなんて……」
 どんどん小さくなる声に佐野くんがうな垂れた。
「ま、女子からするのって勇気がいるものなのかもしれないけど、だからこそ威力があるっていうか、効力があるんじゃん? そういう感じの、『先輩だけは特別』の『特別感』を感じさせてあげればいいんだと思う」
 特別感――。
 キス以外なら、何で特別感を伝えられるだろう。
 真面目に考えていたら、隣に座っていた佐野くんがレジャーシートに転がった。
 佐野くんは転がったまま頭を抱え、
「忘れてた……御園生って『特別感』を素でゼロにするのが超絶得意なやつだったっけ……」
「え……?」
「お忘れだろうか? 俺らと同列で先輩にバレンタインのプレゼントしたの」
「あれはっ――」