「意味がないとは言わないけどさ、言葉だけじゃ不安が拭えないことってない? 御園生が抱えているトラウマだってそういう類じゃない?」
 私の抱えているトラウマ――つまり、漠然とした不安のことだろうか。
 進路のことであったり友達に関すること。それらは確かに言葉だけではどうにもできないものだ。
 そういったものを前にしたとき、私は何を求めただろう? 何に縋っただろう?
 人間関係の不安にもがき苦しみ手を伸ばした先にあったものは――人のぬくもり。
 あのとき、ツカサは毎日電話しようかとか、毎日一緒にお弁当をたべようかとか、色んな案を挙げてくれた。
「言葉以外にも色々あるでしょ? 御園生が藤宮先輩にしかしないことをしてあげればいいんじゃん?」
 私がツカサにしかしないこと……?
 ……手をつなぐ、とか?
「御園生、今何考えた?」
「手をつなぐ……?」
「思考回路がMade in 御園生だよね……」
 佐野くんは、たはは、と乾いた笑いを見せる。
「手をつなぐのなんて友達とだってするだろ? 現にさっきだって俺と手つないでたし。あくまでも、先輩としかしないこと」
「……ぎゅっとする?」
「それはいい線いってると思うけど……」