「秋斗先生、唯さん、海斗と蒼樹さんが遠泳対決しませんか、って。あそこの岩までらしいですけど」
 沖にある岩を指差すも、唯さんと秋斗先生は御園生を見て苦笑を浮かべる。それはまるで、さきほどの御園生さんの表情と似通ったものだった。
「御園生がどうかしたんですか? ってか、なんでこんなとこ……?」
 御園生は今までにないくらい情けない顔をしていた。そして、御園生の手はがっしりと唯さんの手を掴んでいる。
 これはもしかして……。
「御園生、もしかして泳げない?」
 御園生は情けなさの中にも悔しさを垣間見せる表情になる。
 図星ですか……。
 すると、見るに見かねた唯さんが口を開いた。
「あはは、なんていうか海が相当久し振りで入るのにもびびってた口なんだよね。今、ようやく慣れてきたところ。みんなのいるとこまで行くのはちょっと無理だろうなぁ……」
 思わぬ情報にまじまじと御園生を見てしまう。御園生はさらに情けない表情で俯いた。
 つまり、現状、御園生は誰かが一緒じゃないと海には入っていられないのだろう。
 これはグッドタイミングかも。俺、御園生とふたりで話したいことあったし。