「御園生がどうかしたんですか? ってか、なんでこんなとこ……?」
 桃華さんたちがいるところまでは五メートルほどという微妙な距離。でも、その五メートルには大きな差がある。
 みんながいるところは間違いなく足がつかない……。
「御園生、もしかして泳げない?」
 その言葉に無言でいると、
「あはは、なんていうか海が相当久し振りで入るのにもびびってた口なんだよね。今、ようやく慣れてきたところ。みんなのいるとこまで行くのはちょっと無理だろうなぁ……」
 唯兄の言葉に、佐野くんが「マジで?」という視線を向けてくる。
 無言で視線を逸らすと、佐野くんにもクスクスと笑われた。
「俺、飲み物飲みたいから御園生付き合って。唯さんと秋斗先生は遠泳合戦行ってきてください」
「リィ、大丈夫?」
「……浜辺に戻れるならがんばって戻る。佐野くん、手、つないでもらってもいい?」
「了解」