「リィ、もしかしてカナヅチ?」
 唯兄の言葉に耳まで熱くなる。蒼兄は思い出したように、
「そういえば、翠葉はプールの塩素でもかぶれるからあまり家族でプールへ行った記憶はないなぁ……。しかも、海よりは川のほうが多かったし。でも、川でも水深の深いところへは行かなかったっけ……。苦手?」
 確認するように訊かれ、私は小さく頷いた。
「あの、見てるだけでも楽しいから、だから泳いできて?」
 そこへ遠くから、
「翠葉ーっ! 早くおいでよーっ!」
 飛鳥ちゃんたちに手招きされるも、私は小さく手を振り苦笑を返すことしかできなかった。
「翠葉ちゃん、この浜辺は遠浅だから、ある程度のところまでは砂浜だ。ちょっとそこまで、足がつくところまで行ってみない?」
 秋斗さんに誘われるも、不安が残る。
「リィ、手つないで行こうよ。溺れたらちゃんと助けてあげるから」
「翠葉」
 三人に手を引かれ背中を押され、私は波打ち際までやってきた。