海水浴当日――蒼兄の車には私と唯兄、桃華さんと佐野くんが乗り、秋斗さんの車に海斗くんと飛鳥ちゃんが乗った。
 連れて行かれた先は、藤宮が所有するプライベートビーチ。
 砂浜はきれいに管理されているし、私たち以外に人がいないことから人目を気にする必要はない。着いたときにはすでにレジャーシートやタープがセッティングされていた。
 高校生組は着いて早々洋服を脱ぎ捨て海へと駆けていく。あの桃華さんまでもが嬉しそうに走っていったから少しびっくりしていた。
 私はレジャーシートに荷物を置いて、中から飲み物を取り出し一息ついていた。
 日陰が作られているとはいえ、真夏の砂浜は「暑い」という表現を通り越し、灼熱地獄にいる気分。それでも、強すぎず弱すぎずの風が吹いていて、汗をかいた肌には気持ちがいいと感じる。
「翠葉ちゃん、せっかく水着着てるのに海には入らないの?」
 秋斗さんに尋ねられて苦笑を浮かべる。
 水着を着ることに抵抗があったから来るかどうか悩んでいた、というのは嘘じゃない。でも、ほかにも理由はあった。
 海水浴に来るのはどのくらい久しぶりなのかわからないくらい久しぶりなのだ。
 家族と山や川へ出かけることはあっても、海へ来ることはめったになかった。ゆえに、海に入ることが不安。さらには泳ぎにも自信がない。