女の子の水着売り場は同性同士で買い物に来ている人もいれば、恋人と来ているのかな、と思われる人たちもいる。バレンタインのときとはちょっと違う雰囲気。
「上にラッシュガード着るんだったら中はビキニでもいいんじゃない?」
「そうだなぁ……」
 唯兄と蒼兄の会話に目を見開く。
「無理っ。ワンピースタイプがいいっ」
「リィ、スタイルいいんだからもったいないよ」
「スタイルなんて良くないっ。スタイルがいいっていうのは桃華さんや飛鳥ちゃんみたいなことを言うんだよっ? 私はただ細っこいだけだもの」
「ま、そうだなぁ……もうちょっと肉付きよくてもいいと思うけど」
 言いながら、唯兄に脇腹をつつかれた。
「ビキニの上にパーカ着て、短パンはいたら洋服っぽい感じになるけど?」
 蒼兄の提案を頭の中で組み立てるも、足の露出は免れない感じだ。しかし、それはワンピースタイプでも変わらないだろう。
 頭の中で想像していると、真正面に並べて吊るされているトレンカが目に入った。
「……トレンカもはいていい?」
 トレンカを右手に掴み兄ふたりを見上げる。と、
「えー!? せっかくの海なのにっ!? そこまで全部隠すっ!?」
 そう言ったのは唯兄。蒼兄は、
「ま、焼けて痛い思いすることを考えたらトレンカはいちゃったほうがいいのかもな」
 私は早々にパーカとトレンカを選び、ビキニを物色している唯兄たちから少し離れ、上がタンクトップになっている水着を手に取り、それに合わせた短パンを探した。